2018年 09月 16日
私の宇宙を振り返る(1) |
自分のブログを見直していて気がついたこと。
私が最高のブログの読者だ。
自分が、自分の最高のファン。
自分のことは、意外とわからない。
自分を知るために、ブログは役に立つ。
書いていると、読み直した時に意外な発見がある。
楽しい科学と宇宙、なんて言ってるけど
かなり苦しい仕事だ。
とても苦しい打ち上げ準備を
自分を律してよくやった。
チームをまとめてよくやった。全て抜かりなくやった。
今日、HTV7号機の打ち上げが遅れた。
宇宙機の打ち上げが遅れるのはいつものことで、
今回も初めてじゃない。
遅れると、次の打ち上げを目指して、宇宙の予定を変更するのがかなり大変。
関係する全ての人の予定が変わる。
でも不安が見つかり良かったと解釈する。
打ち上げ失敗を防ぐためには万全の状態で打ち上げる必要がある。
打ち上げ前に問題箇所が見つかって良かったと解釈しつつ次の打ち上げチャンスに向けて準備するのだ。
私は2013年から2016年まで7回の米国の民間宇宙会社スペースエックスのドラゴン補給船、2013年8月には日本のHTV輸送船を使って実験機材を宇宙ステーションに運んだ。
米国では打ち上げ場のあるフロリダで、
日本は種子島で打ち上げ準備をした。
打ち上げは遅れることを前提にしている。
天気、不具合、都合により変わる。
変更の度に出張予定もかわるし、試料の入れ替えもある。遅れると作業が増える。ものすごい労力だ。
だから予定通り打ち上がって欲しいと心から願う。
しかし、2015年6月のSpX7号機は、
打ち上がった2分後に爆発。実験機材も試料も失われた。
唖然とした。そして、失われるより、遅れるほうが良い。心からそう思った。
爆発してから9ヶ月後、SpX8の打ち上げでやり直しをした。同時に新しい実験を準備ながら。
同じことを続けていては進歩がないと感じ、
新しい探査時代に必要な、
新しい研究プロジェクトも立ち上げた。
宇宙ステーションでの実験を総括し、
次のフェーズに必要なことをやろうと思っていた。
爆発した後にやり直した実験は、考えられる限り用意周到にした。
しかし、期間が空きすぎて
待たされた間ずっと宇宙環境の影響をうけていた
宇宙の機材が、トラブルを起こした。
宇宙。いろんなことが変わりすぎ少しの時間でも
状況がかわり、
担当も変わり、
やる実験も変わる。
優先順位も変わっていく。
そんな中、睡眠時間を削ってやった実験は、
完全な結果だったとはいえなかった。
さらにやり直しになるわ、何でトラブルを予想出来なかったと責められるわ。
もうこんなやり方ではやっていけない、と悲しくなった。
一度ではうまくいかないものを一度でやろうとするからだ。
でもやる。やる価値のあるものを何度でもやる。新しいやり方を提案しながら。
だから、打ち上げるより、待つべきときがある。
HTV7の打ち上げも、打ち上げ前に問題が見つかった。それで延期になった。
またがんばればいい。がんばれるものがあるのは幸せなことだ。
こんなことを振り返ることができるのも、ブログがあるからだ。
だから、ブログを続ける。
続く。
by yanosachiko
| 2018-09-16 00:03
| 仕事
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